Pyth Network（PYTH）とは？
Pyth Networkは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトに現実世界のデータを提供するための、ブロックチェーンベースのオラクルソリューションです。
ブロックチェーンは本来的に外部情報から隔絶された設計になっており、これによりオンチェーンデータの純度・検証可能性・正確性が担保されます。しかし、この仕組みは信頼不要性を保証する一方で、外部世界との接続を排除してしまうため、広範な利用にとっては非現実的です。
この課題を解決するために「オラクル」が開発されました。オラクルは、閉じたブロックチェーンシステムと現実世界を橋渡しする第三者の仕組みであり、スマートコントラクトとの間で正確なデータ転送を実現します。代表例としては、2014年に構想された分散型予測市場「Augur」や、後にProvable Thingsへリブランドした「Oraclize」などが挙げられます。中でもChainlinkは信頼性の高い価格フィードを提供することでDeFi分野の代表的オラクルとなりました。
2021年にローンチされたPyth Networkは、もともとSolanaブロックチェーン向けに設計されたオラクルであり、現在では複数チェーン対応の価格データ提供ソリューションへと拡張しています。Chainlinkと同様に現実世界のデータをオンチェーンプロトコルに提供しますが、最大の違いはデータ供給元にあります。Chainlinkがノードオペレーターからのデータを用いるのに対し、Pythは金融機関から直接データを取得しています。
PYTHトークンはネットワークのガバナンストークンであり、保有者はPythの開発方針に関する投票に参加できます。
Pyth Networkの開発経緯
Pyth Networkは、シカゴ拠点の大手トレーディング企業「Jump Trading Group」の一部門である Jump Crypto のインキュベータープログラムにより開発されました。伝統的金融（TradFi）との強固な関係性を背景に、現実世界のデータを取得するためのパートナーシップを築いてきました。
2023年には、開発を監督するために Douro Labs が設立され、ポルトガル・ポルトを拠点としています。経営陣には、CEOのMichael Cahill、COOのCiarán Cronin、CTOのJayant Krishnamurthyが名を連ね、いずれもJump出身で金融やソフトウェア分野での豊富な経験を有しています。
Pythは、Jump Trading、Virtu Financial、Multicoin Capital、CoinShares、そしてかつて存在したFTXやAlameda Researchなど、TradFiおよび暗号資産業界の大手プレイヤーと提携・資金調達を行ってきました。2021年4月にSolana上でローンチされ、2023年末には約100のデータ提供者を有していました。
2024年3月時点で、Pythは50億ドル以上の資産をセキュア化し、オラクル市場全体の約10%を占有。さらにSolana全取引の約10%がPythに起因するなど、急速に存在感を高めています。現在ではArbitrum、Avalanche、Hederaなど複数チェーンにも対応しています。
Pyth Networkの仕組み
Pythは、高精度かつ効率的なオラクルを目指して設計されており、暗号資産（BTC、ETHなど）や株式など非暗号資産の価格データをオンチェーンのDeFiプロトコルに提供します。ここでいう「精度」とは提供データの真実性を、「効率性」とは高頻度かつ低遅延での更新を指します。
ネットワークは「消費者（Consumers）」と「提供者（Publishers）」の2者によって構成されます。
- 消費者：Pythの価格フィードを利用するスマートコントラクト利用者。更新ごとに一定料金を支払います。
- 提供者：トレーディング企業や取引所などの金融機関。ネットワークに価格データを提供し、消費者から手数料を受け取ります。
Pythは第三者集約データではなく一次提供者からのデータを活用するため、スピードと精度が保証されます。ただし、この点についてはDeFiにおける中央集権化の懸念も指摘されています。
基盤となる Pythnet はSolanaをベースにしたアプリケーションチェーンで、Proof of Authority（PoA）に基づき各提供者がバリデータを運用します。Pythnetは各資産ごとに1つの基準価格を算出し、クロスチェーンメッセージングを通じて他のブロックチェーンへ配信します。また、データはユーザーがリクエスト（Pull）した場合にのみ転送されるため、ガス効率も高く設計されています。
PYTHトークンの用途
PYTHトークンはPyth Networkのガバナンスに使用されます。
コミュニティメンバーはトークンを保有することで、手数料設定、提供者への報酬配分、ネットワーク更新の承認、資産リストの定義など、開発方針に関する投票に参加できます。
トークノミクスと配分
- 総供給上限：100億PYTH
- 初回ローンチ：2023年11月
- 初期流通量：150万PYTH
- エアドロップ：9万ウォレットに対し2.55億PYTHを配布
- アンロック：6～12か月ごと、3.5年間で完了（2027年まで）
配分内訳：
- エコシステム成長：52%
- 提供者報酬：22%
- プロトコル開発：10%
- プライベートセール：10%
- コミュニティ・初期ローンチ：6%
まとめ
Pyth Networkは、暗号資産および非暗号資産の現実世界価格データをスマートコントラクトに提供するオラクルです。
伝統金融の知見を背景に、金融機関との関係性を活用して高精度の価格データを提供しており、Solanaベースの「Pythnet」を通じて効率的なデータ経済を構築しています。
Pyth Network 基本情報
- 略称：PYTH
- カテゴリ：オラクルネットワーク
- 創設者：Pyth Data Association
- ブロックチェーン：Solana
- プロトコル：分散型オラクルプロトコル
- ローンチ：2021年8月
Pyth Networkのメリット
- 金融機関から直接取得した高精度かつ信頼性の高いリアルタイムデータ
- Solana統合による低コスト取引
- クロスチェーン対応による幅広い利用可能性
Pyth Networkのデメリット
- Solanaブロックチェーンへの依存度が高いため、その制約や不具合に影響を受けやすい
- 他のオラクルネットワークと比較すると普及度はまだ限定的で、市場での実績構築が必要
