Radworks（RAD）とは何か
概要
Radworksは、オープンソースソフトウェア開発における新たな時代を切り開くプロジェクトであり、開発者がオープンソースコード、AIモデル、研究成果をホスティング、協働、報酬化するための真に主権的なインフラを構築することを目的としています。
同社の主要プロダクトである「Radicle」と「Drips」は、それぞれ分散型コードコラボレーションとオープンソース開発者への報酬配分を実現するためのツールキットを提供します。
Radworksは、中央集権的な管理に依存しない分散型インフラを開発者と利用者に提供することで、開発者の自由を保護し、すべての人々がグローバルなデジタル・コモンズに貢献し、その恩恵を享受できる未来を目指しています。
はじめに
デジタルインフラが社会のあらゆる側面を支える現代において、強靭でオープンソースなエコシステムを維持することの重要性は計り知れません。現在、この重要なインフラの多くは中央集権的に管理されており、検閲、プライバシー、セキュリティのリスクを抱えています。
Radworksは、開発者が自身のコードや資金調達をより自由に管理できるようにする「主権的な開発者スタック」を構築することで、これらの課題に取り組んでいます。本稿では、Radworksの使命と仕組み、主要プロダクトである「Radicle」と「Drips」、ネイティブトークン「RAD」の役割、そして今後の展望について解説します。
Radworksとは
Radworksは、開発者がオープンソースコードを安全にホスティングし、コラボレーションし、報酬を得るための主権的な開発者スタックです。
その中核には「Radicle」と「Drips」という2つの主要技術・製品が含まれています。Radworksの基本理念は、開発者が自らのコードとリソースに対して完全な主権を持ち、いかなる第三者からの検閲や支配も受けない環境を提供することにあります。
Radicleの仕組み
Radicleは、ピア・ツー・ピア（P2P）型の分散コードコラボレーションネットワークです。GitHubのような中央集権的プラットフォームに依存することなく、開発者がより高い自律性と耐障害性を得ることを可能にします。
本プロジェクトは2018年に、SoundCloud出身のAlexis Sellier氏とEle Diakomichalis氏により創設されました。Sellier氏はインフラ開発を、Diakomichalis氏はデータサイエンスおよびデータエンジニアリング部門を担当していました。5年にわたる開発を経て、Radicle v1.0は2024年3月に正式リリースされました。
RadicleはGitを基盤としたバージョン管理システムを採用していますが、P2P通信機能、gossipプロトコル、DID（分散型識別子）対応などの分散要素を追加しています。
中央サーバーに依存せず、ユーザーはリポジトリをローカルまたはRadicleネットワーク上でホスティングでき、コードの変更はピア間で直接同期されます。これにより、単一の管理主体が存在せず、ユーザーは自身のデータと作業環境を完全に制御できます。
RadicleエンジニアリングチームはGitを完全なP2P環境に適応させるために、以下の2つの課題を解決しました。
- 信頼環境の前提問題
Gitは本来P2P通信を想定しているものの、実際にはクライアント・サーバーモデルに依存しています。Radicleはリポジトリに検証可能な安定IDを付与し、第三者によるホスティングでも信頼性を保証できる仕組みを導入しました。 - P2P環境での競合処理
中央サーバーが存在しないため、異なるブランチ間での競合が発生します。Radicleは「Collaborative Objects（COB）」と呼ばれる独自構造を用いて、課題・提案・アイデンティティなどをリポジトリ上で管理し、非衝突的な共同作業を実現しています。
Radicleのアーキテクチャは、Git互換性を維持しながらP2P機能を拡張する4層構造で構成されています。
- Radicleノード：DIDによって識別され、gossipプロトコルを介して相互にリポジトリ情報を交換します。
- Radicleストレージ：ローカル優先設計により、中央サーバーを排除。ユーザーの署名やソーシャル要素を管理します。
- Collaborative Objects（COB）：課題、パッチ、アイデンティティを管理するデータ構造。拡張可能。
- インターフェース：CLIおよびウェブUIを提供。ホスト型ウェブインターフェースまたは自前サーバーで利用可能。
Dripsの仕組み
Dripsは、オープンソースソフトウェアの資金調達問題を解決するために設計されたRadworksのもう一つの主要プロダクトです。Ethereum上で稼働する分散型ツールキットであり、オープンソースプロジェクトへの資金配分を透明かつ効率的に行うことができます。
主な特徴は以下の通りです。
- GitHubリポジトリへの容易な資金提供
Ethereumアドレスを持たないプロジェクトにも即座に支援が可能。 - 柔軟な資金分配
あらゆるERC-20トークンを継続的または一度きりで分配でき、手数料は不要。 - コミュニティによる共同配分
資金の配分先や比率をコミュニティが共同で決定可能。 - 依存関係プロジェクトへの自動配分
支援先プロジェクトの依存先にも資金が分配され、波及効果を生む。 - 180以上のプロジェクトに対応
Web3および従来型OSSを問わず幅広い支援実績を持つ。
この継続的資金提供モデルにより、オープンソースプロジェクトの長期的な持続性が確保されます。
Radworksの独自性
RadicleおよびDripsの特徴は以下の通りです。
- 完全分散化：中央集権的管理者が存在せず、P2Pおよびブロックチェーン技術で構築。
- コミュニティ主導ガバナンス：オンチェーンおよびオフチェーンでのガバナンスを実装。
- セキュリティと主権性：暗号技術により安全性を確保し、開発者に完全な所有権を付与。
- 革新的な資金循環モデル：継続的な資金流入により、開発者コミュニティの自立を支援。
RADトークンについて
RADはRadworksエコシステムのネイティブトークンであり、プロトコル運営とガバナンスの中核的役割を果たします。
2024年末までに以下の機能を展開予定です。
- ガバナンス（稼働中）：RAD保有者はRadworks DAOの意思決定に参加し、開発方針に影響を与えることが可能。
- ステーキングおよびインセンティブ（2024年末予定）：ノード運営者はRADをステークすることで、ストレージおよびデータ提供サービスを行い、報酬を得ることができます。
今後の展望
Radworksは今後のロードマップとして以下の開発を予定しています。
- Radworks Seed Network（RSN）：2024年導入予定。第三者ゲートウェイ事業者によるノード運営を可能にし、ネットワークのスケーラビリティを向上。
- RadicleとDripsの統合：Web3コミュニティ向けの新クライアント開発により、資金提供とコラボレーションを一体化。
- ガバナンス拡張とトークノミクス更新：RADにワークトークン機能を追加し、エコシステム内でのユーティリティを拡大。
結論
急速に変化するデジタル環境において、分散型インフラの必要性はこれまでになく高まっています。AI安全性やコードの表現自由など、技術の政治化が進む現代社会において、レジリエンスと自由、主権を尊重するプラットフォームが求められています。
Radworksは、真に分散化されたインフラを通じて開発者とユーザーの自由を守り、誰もがグローバルなデジタル・コモンズに貢献し、その恩恵を受けられる未来を実現しようとしています。
