OriginTrail（オリジントレイル）とは？（TRAC）
OriginTrail は、ブロックチェーンと「分散型ナレッジグラフ（Decentralized Knowledge Graph：DKG）」と呼ばれる技術を組み合わせ、現実世界の資産に関するデータをデジタル空間で管理するためのプラットフォームです。
このエコシステムは、世界中の重要で共有された知識や資産をより発見しやすくすることを目的として設計されています。
OriginTrail は当初、ブロックチェーン技術をサプライチェーン・ロジスティクス領域に導入することを目的として開発されました。開発チームは、顧客がデータ共有、製品認証、製品追跡、セキュリティ確保を行える信頼性の高いサプライチェーンハブを構築することを目指しました。
その後、OriginTrail は、実世界資産（Real World Assets：RWA）をデジタル化し、所有権の移転や検証などに利用できるプラットフォームへと発展しました。したがって、OriginTrail は、VeChain（サプライチェーン管理）や Centrifuge（RWA トークン化）などのプロジェクトに類似する機能を備えています。さらに、すべての情報の出所を検証可能にすることで、誤情報の問題にも取り組んでいます。
暗号資産業界の一般的な用語を用いると、OriginTrail は「レイヤー1（Layer 1）」としてブロックチェーン、「レイヤー2（Layer 2）」として分散型ナレッジグラフ（DKG）を構成しています。これにより、ブロックチェーンの信頼性と検証可能性に加え、DKG によるデータの構造化・意味づけを実現し、論理的かつ機能的なデータシステムを形成しています。
さらに OriginTrail は、人工知能（AI）を考慮したデータ管理およびスケーラビリティ拡張にも取り組んでいます。
Trace トークン（TRAC） は OriginTrail のユーティリティトークンであり、ステーキング、ナレッジアセット（Knowledge Assets）と呼ばれるデータの発行手数料の支払い、ならびに DKG ネットワークノード上の担保設定に使用されます。
開発の経緯
OriginTrail は、Žiga Drev（ジガ・ドレフ）、Tomaž Levak（トマシュ・レヴァク）、および Branimir Rakić（ブラニミル・ラキッチ） によって 2017～2018 年に共同設立されました。
世界中の企業や組織がブロックチェーンと DKG 技術を用いてデータを管理できるプラットフォームを目指しました。
OriginTrail を導入した主な企業・団体には、英国規格協会（BSI）、Supplier Compliance Audit Network（SCAN）、スイス連邦鉄道（SBB）、世界血友病連盟（WFH）、および 欧州連合や英国の政府プロジェクト などがあります。
コア開発は香港に拠点を置く Trace Labs によって行われており、同社は Walmart Food Safety Innovation Spark Award を受賞し、中国の Walmart Food Safety Collaboration Center’s Innovation Program にも採択されています。
2018 年 1 月、Trace Labs チームは資金調達のための ICO（イニシャル・コイン・オファリング） を実施し、わずか 20 分で 2,250 万ドル の資金を調達しました。
2022 年 4 月には、分散型ナレッジグラフ（DKG）の活用と Web3 領域における RWA トークン化のユーティリティをより詳細に記述した 第2版ホワイトペーパー が公開されました。
OriginTrail の仕組み
OriginTrail の レイヤー1 はコンセンサス層として、システムの信頼性を支える基盤です。
当初は Ethereum 上で稼働していましたが、後に Gnosis や Polygon にも展開されました。
さらに、独自の Polkadot パラチェーン（トークン：OTP） を開発し、追加のレイヤー1 ブロックチェーンとして機能を強化しています。
レイヤー2 である分散型ナレッジグラフ（DKG）は、OriginTrail Decentralized Network（ODN） と呼ばれるノード群によって支えられています。これらのノードはオフチェーンで動作し、ブロックチェーンの外部でデータを処理したうえで、その結果をレイヤー1 に報告します。ノードはパーミッションレスネットワーク上で相互に通信し、データの保存や操作の報酬として TRAC トークンを受け取ります。
OriginTrail のマルチチェーン構造は高い相互運用性を備えており、各ノードがグローバルな合意形成を行うことなく、データの完全性と真正性を検証できます。各ノードは独自のローカル・ブロックチェーンを保持し、検証済みの取引やイベントを記録します。
このシステムは複雑ですが、簡単に言えば「Web3 環境におけるデジタル資産を参照するインターネットの URL システム」のようなものです。
DKG を通じて、ユーザーは「ナレッジアセット」と呼ばれる資産を作成、検索、追跡、推薦などが可能です。一方でブロックチェーン層は、これらの操作を分散型かつ不変の台帳に記録します。
TRAC トークンの利用用途
Trace トークン（TRAC） は OriginTrail DKG の燃料として機能します。
OriginTrail プロトコルの利用を促進し、プラットフォーム上の各種操作を支える役割を担っています。
TRAC は 2018 年に Ethereum ブロックチェーン上で ERC-20 トークンとして発行されました。主な用途は以下のとおりです：
- ナレッジアセットの発行および更新手数料の支払い
- DKG ノードにおける担保（ステーキング／デリゲーション）設定
- 価値移転の手段として利用
また、OriginTrail 独自の Polkadot ベーストークンである OTP（OriginTrail Parachain Token） は、プロトコル内取引（ガス代に類似）の処理、DKG の採用促進、およびコミュニティガバナンス投票に使用されます。
トークン分配
TRAC トークンの最大供給量は 5億枚 に固定されています。
2018 年 1 月のプレセール／クラウドセール時にそのうちの半分が販売され、すべて同時に発行されました。追加発行は予定されておらず、インフレーションは存在しません。
残りの分配は以下の通りです：
- 20%：将来のプロジェクト開発のためチームが保有
- 18%：創業者およびプレICO投資家・貢献者
- 5%：市場流動性確保用
- 5%：開発チームおよびアドバイザー報酬
- 2%：トークン販売を支援した関係者への報酬
まとめ
OriginTrail は、サプライチェーンの最適化および現実資産と知識データのデジタル管理を目的とした革新的なプラットフォームです。
ブロックチェーンとオフチェーン DKG からなる二層構造によって、マルチファンクショナルなエコシステムを実現しています。
TRAC（Trace）トークン は 2018 年に Ethereum 上で発行され、ユーザーがナレッジアセットを発行・更新し、プロトコル報酬を得ることを可能にします。
OriginTrail は、信頼性・透明性・相互運用性を兼ね備えた Web3 データインフラとして、現実世界とデジタル世界をつなぐ重要な役割を果たしています。
